すぐに本文を読む NTTデータデジタルガバメント This site is only available in Japanese.
株式会社NTTデータ
サイト内検索  
>> 検索のヘルプ
このサイトは、電子政府・IT政策をテーマに、世界の動向やNTTデータの取り組みを紹介しています。
ホームワールドレポートメールマガジンIT政策ウォッチNTTデータの取り組み
お問い合わせ   サイトマップ
概要  
欧米で「患者参加型医療」への流れが加速する背景で、オンライン医療情報の質や信頼性を第三者機関が認証する仕組みが注目されている。日本を含むアジアではまだ知名度・普及率ともに低いが、今後、医療情報の国際化とWeb2.0を含む医療情報交換チャネルの多様化にあわせ、欧米に続いて認証の需要が拡大することが期待される。国際的に最も認知度が高い国際認証団体Health on the Net Foundation(HON)の責任者Celia Boyer氏に、認証の仕組みと日本を含むアジア展開の見通しを伺った。   
地域  
キーワード   

米国特別号 2010年6月号

欧米で広まるオンライン医療情報の認証コード、日本展開も視野に

−国際認証団体HON責任者Celia Boyer氏に聞く−

Celia Boyer氏

欧米で「患者参加型医療」への流れが加速する裏側 で、オンライン医療情報の質や信頼性を保証する「認証コード」の役割が注目されている。これは患者がネット検索で入手したり、Web2.0を通じて患者同士、あるいは医師とやり取りしたりするオンライン医療情報について、第三者機関がその質や信頼性を認証する仕組みである。日本ではまだ知名度・普及率ともに低いが、医療情報の国際化と医療系ウェブサイトの増加で欧米での需要は右肩上がりとなっている。今回は、国際的に最も認知度が高く、日本を含むアジア展開も加速させている国際認証団体Health on the Net Foundation:HON[英語サイト]の責任者Celia Boyer氏へのインタビューを通じ、認証コードの仕組みとアジア展開の見通しについて紹介する。(以下、インタビューを除くHONに関する情報、認証コード、画像などの著作はHealth on the Net Foundationに帰属します。Copyright@Health on the Net Foundation)

 

米国のオンライン医療・健康情報の現状

米国ではネットによる医療・健康情報の発信、アクセスが増える一方で、情報の中身に問題があることや、情報の利用に際して潜在的な危険をはらむ点にどう対応するかが長く課題となってきた。特に、昨年の景気対策法に基づく医療IT投資や、今年3月の医療改革法の成立などにより、医療情報の電子化や、被保険者の増加に伴う医療サービスへの需要の急拡大が予想されており、医療情報の質や信頼性の確保は喫緊の取り組み課題と見られている。医療IT専門家の間では、特に在宅医療ニーズの拡大に合わせ、Web2.0など情報交換のチャネルの多様化が進む事態に対応するため、医療情報の質・信頼性を確保する枠組みを検討する必要があるとの意見が多く出ている。

米国ではすでに、American Medical Association(AMA)や非営利団体URACなどが医療情報の質や信頼性のための指針を作成しているが、米国も含めて国際的に認知度が高いのはHealth on the Net Foundation(HON)の 提供する倫理基準(HONcode)とされている。

 

Health on the Net Foundation(HON)とは

Health on the Net Foundation(HON)ロゴ
Health on the Net Foundation(HON)ロゴ

HONは医療・健康関連ウェブサイトの質と信頼性改善に取り組むNPOで、1995年、全世界からの有識者を集めインターネット上の医療情報利用に関して意見交換を行った国際会議で設置が決められた。1996年にスイスのジュネーブを本拠に設立され、欧州委員会(EU)やフランス政府などからの出資を受けて運営されている。

主な業務は、一般市民と医療専門家に信頼できるオンライン医療・健康関連情報を提供する目的で、医療・健康関連ウェブサイトの品質評価を行うことである。HONが定めた8つの倫理基準を満たすと判断されたウェブサイトには、HONcodeと呼ばれる認証シールが与えられ、ウェブサイトの利用者がいつでも目に付くところに提示することができる。このコードは国際的に最も古くから利用されており、有効期限は1年であるが、申請や再申請などは全て無料となっている。

オンライン医療・健康情報を提供するウェブサイトの認証作業では、以下の8つの倫理基準(HONcode)[英語サイト]を満たしているかどうかが審査される(日本語説明はこちら)

  1. 医学的な/健康に関するアドバイスは、医学/健康に関する教育を受け、資格を持つものが提示していること。ただし、専門的な教育を受けていないものによるアドバイスであることを明確に示している場合を除く(Authoritative)
  2. 提示する情報は、患者と医師の関係を支援(Support)するものとして設計されているものであり、これに置き換わるものではないこと(Complementarity)
  3. 医学/健康ウェブサイトを訪れた患者や個人の情報に関するプライバシーを、その身元も含めて、尊重すること。ウェブサイトのオーナーは、そのウェブサイトおよびミラーサイトが置かれている国の、医学/健康情報のプライバシーに関する法律が要求する基準を尊重し遵守すること(Privacy)
  4. 必要であれば、このサイトに含まれる情報は、明確な情報源が示され、可能であれば、そのデータへのHTMLリンクが設定されること。最終の交信された日付を(例えば末尾に)明確に表示されていること(Attribution)
  5. 特定の治療、商品、サービスの利点/性能に関する疑問に対して、上記の第4項に示された方法により、適切な偏りのない証拠で答えること(Justifiability)
  6. Webサイトの設計者は、できる限り明確な方法で情報を提供するように心がけ、追加情報やサポートを要求する訪問者のために作成責任者の連絡先を提示すること。Webmasterは、その管理するすべてのページに、そのメールアドレスを明確に表示すること(Transparency)
  7. そのWebサイトへの財政、サービス、物的支援を行っている民間企業、非営利組織がある場合は、そのことを明確に示すこと。(Financial Disclosure)
  8. もし、広告がその資金源である場合は、そのことを明確に宣言すること。Webサイトの所有者の広告に関する方針を、そのサイトに表示すること。広告やその他のプロモーション情報は、それを見た人に、そのサイトで作成されたオリジナルの情報と容易に区別できるような方法と文脈で、提示されていること(Advertising Policy)

この倫理基準は日本語も含め約35ヶ国語で利用できるようになっている。この8基準に基づくガイドラインを満たしたHONcode認証サイトは世界に約7,000件あり、米国の1,953件をトップに、フランス(1,420件)、スペイン(602件)など 欧州で広く普及している。最も認証件数の多い米国では、国立医学図書館(National Library of Medicine)や疾病予防管理センター(Center for Disease Control and Prevention:CDC)をはじめとする連邦機関のサイトから、患者同士が医療情報交換をするソーシャルネットワーキングサイトまで、幅広いウェブサイトが認証を受けている。

一般市民、医療専門家を含む全世界のウェブユーザー1,500人を対象に2005年に実施した調査[英語サイト]では、過半数の51.1%がHONを最も認知度の高いオンライン医療・健康情報の認証サイトとして挙げている。HONを選んだユーザのうち55%は米国、29%が欧州からの利用者であることもわかっており、欧米でのHONcodeの信頼性の高さを示す一例となっている。一方、アジア展開はこれから加速させていく予定で、日本ではこれまでに3件のサイトが認証を受けた実績があるほか、最近では台湾で日本人向けに日本語で医療サービスを提供するウェブサイトの認証事例も出てきているという。

 

HONcodeとその役割〜HON責任者Celia Boyer氏へのインタビュー

Q. HONcodeが世界的に最も認知度が高い理由は何か
A. 全世界の有識者が集まった国際会議での決定に基づいて設立されたNPOで、国連から定期的に検査を受けているという中立性に加え、認定申請、再申請とも無料であるという点だと思います。

Q. 申請料が無料のHONと有料の認定組織との違いは何か
A. HONcode認定は、ウェブ提供者の情報提示の仕方が、倫理基準を満たし、情報の利用者が情報源を確認できるようになっているかどうかを認定するものです。HONの認証コードの意義はこの基本的な枠組みを広げることにあります。 有料の認証組織は、対象を医療情報の内容の正確さなどにまで掘り下げているところもあり、HONとはミッションが違うと思っています。特に、国を問わず遠隔・在宅医療関連のウェブサイトが増える昨今のトレンドを見ると、申請が無料というHONの気軽さは、多くのサイトに医療情報の質や信頼性への取り組みを促すことになると思います。

Q. HONcode認証のメリットはウェブの信頼性向上のほかにあるか
A. もちろんあります。2008年7月から2010年1月にかけて、HONcode認証済みのウェブサイト管理者662人を対象に調査[英語サイト]を実施したところ、認証のメリットとして、信頼性向上に次いで、ウェブ管理体制の強化、よりよい情報開示、情報検索機能の向上といった回答がありました。

Q. HONcodeはウェブの利用者にどんなメリットがあるのか
A. 利用者はアクセスしているサイトにある医療情報の信頼性を確認できます。今秋くらいには、利用者がHONをどう評価しているかの調査結果が出る予定ですが、HONが患者や個人向けに提供するHONcode認証済みのウェブサイトの検索ツールバー、画像検索エンジン(HONMedia[英語サイト])、医療・健康関連のイベント検索エンジン(HONmeeting[英語サイト])、医療リソースのディレクトリ(HONselect[英語サイト])、医療用フルテキストの検索エンジン(MedHunt[英語サイト])などの有効性が具体的にわかると思います。

Q. 米国ではCDCなど政府機関がHONcodeを取得しているが、政府レベルの提携があるのか
A. 特に米国の連邦政府と提携してはいません。それでも米連邦政府で普及が進んだ理由は、おそらくHONが唯一の中立的な国際認定団体であることと、申請が無料である点が評価されたのだと思います。HONが政府レベルで提携しているのはフランスです。医療情報ウェブサイト認証制度の導入を受け、2007年から仏政府の依頼に基づき、認証業務を請け負っています。

Q. Web2.0を通じ医療情報をやり取りする患者コミュニティが増えているが、HONcode認証の基準・手続きは、従来の一方的な情報提供型のウェブサイトとは異なるのか
A. ウェブの利用者やウェブサイトの管理者からの意見をもとに、09年9月にWeb2.0用に8つの倫理基準[英語サイト]を設定しました。 この中では、インタラクティブな情報交換プラットフォームを作る場合には、運営ルールを作り、ハンドルネームであっても管理人を明確にするほか、参加者が医療専門家ではないことを前提とする原則などを明記するよう求めています。参加者が提供する情報の出典を提示することで、個人の経験に基づく情報と区別させるほか、参加者の知識に照らして適切だと思われる情報のみを掲載することも盛り込んでいます。加えて、プラットフォームの管理人がボランティアであるのか特定の団体から支援を受けているのかを明記し、利用者が広告を出すことを認めるかどうかのルール作りをすることも定めています。

Q. 在宅医療の現場では、Web2.0で患者と医師が情報交換するサイトも増える見通しだが、医師が参加するプラットフォームも患者コミュニティサイトと同様に扱うのか
A. 原則として、インタラクティブな機能がある医療・健康情報サイトは全てWeb2.0と分類しています。医師が参加する場合にはその旨を明記すればよく、ウェブは疾病の診断など重要な医療行為を「支援する」機能を担うとの位置づけなので、現時点では同様に扱うことで特に問題はないと思います。ただ、今後インタラクティブサイトが多様化した場合に備え、ウェブ管理者からの意見を柔軟に倫理基準のアップデートに反映させるなどの体制は整えています。

Q. HONは認証したサイトの医療・健康情報の質や正確さにどこまで責任があるのか
A. HONcode認証は医療情報の中身の正確性を保証するものではないため、例えばウェブ上の医療情報が古かったり間違ったりしていた結果、利用者に健康被害が出ても責任を問われることはありません。ただ、HONcode認証サイトの情報の質についてウェブの利用者から苦情を受けた場合には、苦情の正当性を調査します。改善の余地があると判断した場合は、ウェブ管理者に2週間以内での対応を求め、期限内に改善されない場合は、原則としてHONcodeを永久剥奪する措置を取っています。ただ、実際に苦情が正当だと認められるケースは少なく、2010年はこれまでに101件の苦情が寄せられましたが、正当性がないと判断されたのが74件でした。

Q. HONcode普及、日本展開にむけた今後の取り組み
A. HONcodeの新規取得サイトの半分以上は、取得に踏み切った理由として口コミや認証済みサイトを見たことを挙げています。HONでは、自分がブックマークに登録したウェブサイトとそれに対する評価を他人と共有できるツール[英語サイト]を開発していますが、これが本格的に利用できるようになれば、HON認証済みのウェブサイトが人の目に触れる機会が増え、普及を後押しできるのではないかと考えています。 さらに、多言語化の対応も必要だと思っています。例えば、日本語のみのウェブサイトがHONcodeの認証を申請したり、8つの倫理基準を日本語で確認したりすることはできますが、申請に必要な倫理基準の自己評価は、現時点では英語でなければできません。この言語の壁がHONcode申請のモチベーションを下げている可能性があると思うのです。 これまでは特にプロモーション活動はしてきませんでしたが、今後は、日本を初めとするアジアでHONcodeの認知度を広めると同時に、多言語対応を進めていきたいと思っています。

 

認証コードの意義

医療情報の国際化や情報交換チャネルの多様化により、オンライン医療・健康情報の質・信頼性の確保は、患者の安全や医療の質向上の観点から今まで以上に重要さを増している。Boyer氏はこうしたトレンドを受け、とりわけ申請料を無料にするHONの取り組みは、すでに固定ユーザの多いウェブサイトからWeb2.0を含むあらゆる新興ウェブサイトまで、広く医療の質・信頼性を意識・浸透させる効果があると指摘している。 日本と同様に高齢化社会に直面する欧米では、重要な医療形態となっている在宅医療分野での認証ニーズが右肩上がりである。日本にも医療・健康関係のウェブサイトはたくさんあるが、一般の患者や市民がその品質を評価することは難しいため、まずは認証制度そのものに対する認知度・普及率を向上させることが必要であろう。オンライン医療・健康情報の認証コードの普及が進めば、ひいては「患者参加型医療」の流れに弾みをつけることにもつながり、高度な医療技術とあわせ、日本の医療の質と国際競争力が一段と向上されることが期待される。

【2010年6月 NTT DATA AgileNet L.L.C.】

 

このページのトップへ
ワールドレポート トップへ