|
![]() |
| このサイトは、電子政府・IT政策をテーマに、世界の動向やNTTデータの取り組みを紹介しています。 |
|
|
2005年3月に発表された欧州委員会の調査によれば、スペイン及びイタリアの電子政府サービスの成熟度及び洗練度は、EU加盟諸国で中位に位置している。しかしながら、イタリアは、近年における同サービスの改善率が最も高い国のうちの一つで、スペインにおいては、納税申告のオンライン処理率において上位につけている。本稿では、これら2カ国における電子申告の利用体験をレポートする。
|
|
|
|
|
|
|
欧州マンスリーニュース 2006年2月号
体験レポート:スペイン及びイタリアにおける電子申告電子申告利用者の急増するスペインスペインでは、年間総収入が、一定の金額を超える場合(2003年度では、22,000ユーロ)、確定申告を行わなければらない。税年度は1月1日から12月31日であり、納税期間は、翌年度の5月1日から6月30日である。電子申告システムは、スペイン国税庁(AEAT: 経済財務省国税庁)によって1999年に導入され、それ以降、その利用者数は年々著しく増加している (図1参照)。昨年度の利用実績は、全申告件数の19%であり、2006年度には4人に1人の割合で電子申告が利用されると期待されている。 図 1:1999〜2005年度における電子申告の利用件数 [ユーザー証明書の取得]電子申告を行うためには、まず、ユーザー証明書を取得しなければならない。ユーザー証明書はシリアル番号、発行番号、有効期限日、発行元などの一連のデータから構成されるもので、AEAT承認の認証機関によってのみ、無料で発行される。同証明書は、インターネットで送信されるデータの送信元を証明し、かつそのデータが改ざんされていないことを保障する電子署名として機能する。 ユーザー証明書はオンラインで申請[スペイン語サイト]するが、最終的には、本人確認のため、AEAT登録オフィスに直接足を運ばなければならない。これが完了すれば、申請者は自身のウェブブラウザにユーザー証明書をダウンロードすることができる。ウェブブラウザは、一般に普及しているものであれば問題はないが、対応ブラウザを有していない場合は、AEATウェブサイトからダウンロードすることができる。ユーザー証明書の有効期限は2年間だが、その後も更新することは可能である。 [電子申告の手続き]図2は、電子申告の大まかな流れを示したものである。 電子申告は、AEATウェブサイトから、無料でダウンロードできる、PADREプログラムを利用して行う。同PADREプログラムを起動すると、申告に必要な利用者の個人データ(住所、家族構成、扶養家族など)を、5つの画面に連続して入力するよう求められる。必要事項をすべて入力すると、次に所得情報を入力するよう求められる。入力内容はA〜Nまでの14項目に分かれており、全部で12ページある(図3参照)。納税者は次のいずれかの方法で、これら一連のデータの入力を行う。
データ入力後、記入漏れや誤記入がないか自身で確認しなければならない。その後、銀行口座の詳細情報か、銀行で直接支払う場合には、銀行で取得した電子申告用に定められたコードを入力して、支払いに関する詳細情報を登録する。 必要事項を入力し終わると、申告書の最後のページにあたる「L」に到達する。ここでは申告の結果、すなわち、納税か還付かが画面に表示され、申告者はその内容を確認することができる。表示された内容に同意する場合には申請者は電子署名を用いて申告書を送信する。 送信後、PADREプログラムは当該申請フォームのPDFファイルを自動作成する。受理した日時と電子コードが表示されたファイルが画面に表示されるので、利用者は、提出した申告書がAEATで受理されたことを確認できる。また、このファイルは確定申告を行った証明書にもなる。申告が却下された場合には、その理由が記載されたページが、画面上に表示される。 図2:電子申告の手続きの流れ
[電子申告のメリット]電子申告のメリットは、やはり、いつでも手軽かつ迅速に申告できる点にある。紙面で申告する場合は、申告書に必要事項を記入の上、AETEに直接足を運んで必要書類を提出しなければならい。これに比べると電子申告は、スケジュールを調整する必要もなく、非常に便利が良い。また、電子署名として機能するユーザー証明書も無料でダウンロードできる上、申告手続きも簡単である。AEATの調査結果によると、大部分の利用者はこのシステムに満足し、不満を感じているのは全体の16%に過ぎなかった。同様に、電子申告プロセスが難しいと回答した利用者は、わずか9%であった。これらの不満は、サービスを利用するためには、コンピュータやインターネットに関する一般的な知識が、多少なりとも必要とされることに起因するとみなされている。 また、同サービスの利用に関して、様々な情報やヘルプ機能を提供している「AEATのバーチャルオフィス」サイト(「Virtual Office of the Tax Agency」[スペイン語サイト])も充実している。同サイトの「電子申告書の提出に関するヘルプ」と「一般的な技術問題の解決法」では、申告手続きのプロセスや想定される質問に関する説明 ・回答が記載されている。更に、AEATは2004年12月から、ウェブ上で、所得シミュレータ ・サービスの提供を開始した。確定申告者は、AEATにドラフト申告書(納税額見積書)を依頼することができるが、従来、このサービスは、3月〜6月に限定されたものであった。AEATの所得シミュレータを利用すれば、一年を通して、いつでも自分の所得データを登録し、納税額の見積もりを瞬時に入手することができる。 [今後期待される改善点]難点を挙げれば、以下の3つであろう。
これらは全て、本人確認及び安全の確保と、利便性のバランスに関する問題である。本人確認及び安全の確保を保障する上で生じる手間を、どれだけ利用者に感じさせないようにするか、様々な工夫が望まれるところである。 イタリアの電子申告:手軽、迅速、かつ正確イタリアの税年度は暦年度と同じ1月1日から12月31日までで、確定申告は、不動産収入、資本所得、自営業や従属労働(注1)などによる収入がある納税者に義務付けられている。自身で電子申告することのできる個人納税者は、帳簿をつける必要のない自営業者や、資本、不動産あるいは従属労働による収入のみを収入源とする人などに限定されている。この場合、納税者は、Modello Unicoと呼ばれる申告書を提出する。提出期限は、紙面で申告する場合は、8月1日で、電子申告を利用する場合は、10月31日である。社会保障手当てを受けていたり、協同組合の従業員である場合は、Modello 370と呼ばれる申告書を提出しなければならないが、これについては、代行業者しか、電子申告を利用することができない。この場合の申告書の提出期限は、原則として、10月20日である。 (注1)従属労働とは、自営労働の一種であるが、他人に雇われて労働する労働をいう。例としては、フリーランスのジャーナリスト、音楽家、コンサルタントなどである。 [PINコードとパスワードの取得]電子申告を行うには、まず、10桁の数字で構成されているPINコードに加えて、パスワードを取得しなければならない。これらの取得方法は2通りある。その一つは、税務署のウェブサイト[イタリア語サイト]から、PINコードの最初の4桁を取得し、残りの6桁とパスワードを税務署から郵送してもらう方法である。この場合、申請者は、ウェブ上の申請ページで、前回の確定申告内容と同じ情報を入力するよう求められる。具体的には、税務識別コード(codice fiscale)、メールアドレス、前回提出した申告書の種類、過去に申告した所得額、前回の確定申告で代行業者を利用した場合は、その業者名、といった情報である。(これらの情報について、中央税務署で保存されている情報と異なるものを、3度連続して入力すると、ウェブ上でPINコードとパスワードを申請することができなくなる。この場合、利用者は最寄の税務署に電話してこれらを取得しなければならない。)オンライン申請で4桁を無事に取得したら、残りの6桁は、パスワードとともに、15〜20日以内に、税務署から郵送されてくる。期日を過ぎても郵送されてこない場合は、最寄の税務署に足を運び、新たなPINコードとパスワードを発行してもらう。 もう一つの方法は、最寄の税務署に出向くか、あるいは自動音声応答の電話サービスを利用し、パスワードとともに最初の4桁を取得する方法である。これらを取得すると、税務署のウェブサイトにログインすることができ、そこから残りの6桁を取得することができる。 PINコードとパスワードを取得すると、電子申告が可能になるのみでなく、税務署のアーカイブに保存された納税者自身の個人情報(本人確認、住所、過去に提出済みの申告書の内容、還付金や支払いの詳細等)にもアクセスすることができる。また、PINコードとパスワードは、最終使用日の次の年の終わり(12月31日)まで、有効となるので、毎年、何らかの理由で、PINコードとパスワードを使用すれば、有効期限が切れることはない。 [ソフトウェアのダウンロード]有効なパスワードとPINコードを入手すると、利用者は、安全性が確保されたユーザー専用サイトにアクセスして必要なソフトウェアをダウンロードすることが可能となる。このソフトウェアには、利用者が、前年度に支払った税額や関連データが表示される、Modello Unicowebと言うファイルが含まれており、電子申告は、このファイルに必要事項を入力していくことにより行う。申告書を送信する前には、記入漏れや入力情報に矛盾がないか、自動的にチェックしてくれ、問題がある場合は警告メッセージが表示される。送信後は、受理書がオンラインで発行され、申告書が無事受理されたことを確認できる。申告書を提出した後に、訂正や追加内容があると気づいた場合は、期日前であれば、それらを訂正し、再送信することができる。 不足分の支払いについては、ソフトウェアに含まれている、支払い書(F24)を利用し、オンラインで納税できるようになっている。オンライン納税は、税務署が提携している金融機関に、利用者が口座を持っていることが条件だが、税務署は全ての大手銀行及び多数の地方金融機関と提携しているので、この仕組みに特に不都合を感じることはない。還付金については、税務署のウェブサイトから、銀行口座の詳細を登録できるようになっており、そこに入金されるようになっている。 [電子申告のメリット]電子申告が導入される前は、自身で確定申告を行うイタリアの納税者は、郵便局や銀行にできる長い列に並び、紙面での申告書を提出しなければならなかった。この面倒な手続きを大幅に簡素化してくれる電子申告は、非常に便利が良い。申告書にデータを入力する際には、丁寧に誘導してくれるのみでなく、ダウンロードできるデータがあり、また、送信前には記入漏れや誤記入をチェックしてくれるので、紙面での記入に比べて、より簡単、迅速かつ正確に申告ができる。電子申告を利用した場合、書面申告に比べて、申告書の提出期限に余裕があるのもメリットである。 [今後期待される改善点]今後、最も改善が望まれる点は、より多くの納税者が電子申告を利用できるようにすることである。上述の通り、電子申告は、帳簿をつける必要のない自営業者や、資本、不動産、従属労働による収入のみを収入源とする人など、一部の限られた納税者しか利用できない。また、残念なことは、多少の手数料を支払っても、書面にて代行申請してくれる仲介業者に依頼した方が簡単である、と考えている納税者も多いことである。電子申告がより普及するためには、税務署の積極的な広報活動が必要であろう。 利便性が高く安全で信頼性の高い電子申告の構築を目指して先月号及び本稿を通して、欧州4カ国の電子申告サービスを紹介した。いずれの国のサービスも、手軽で便利で使いやすいと、利用者からは好評である。しかしながら、更なる利便性及び普及率の向上に向けて、残された課題もある。安全性の面からは、スペインに見られるように、利用者登録の手続きの際に電子署名を提供するのも一方法であろう。一方、本人確認を含むサービスの利用者登録は、個人のID ナンバーを利用しているデンマーク以外で、最も時間と手間を要する部分である。信頼性を確保しながら、いかにその手間を感じさせないようにするか、今後、様々な工夫が望まれるところである。 |