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オーストラリアの納税方法には、申告用紙に必要事項を記入しポストに投函する方法(タックス・パック)と、パソコンを用いてオンラインで行う方法(電子申告)とが存在し、現在、個人の確定申告の7割がその電子申告によって行われている。本レポートでは、1999年より導入されたインターネット申告である「e-Tax」を取上げ、その使用方法を概観すると共に、その利便性や問題点等について、実際の体験談を報告する。
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アジアマンスリーニュース 2006年1月号
オーストラリアの納税申告【インターネット申告が1999年よりスタート】オーストラリアでは、原則として、納税対象者全員が確定申告することとなっており、毎課税年度(7月1日〜翌年6月30日まで)ごとに、通常は当該年度の10月31日までに申告することとなっている。納税申告の方法には、「タックス・パック(Tax Pack)」と呼ばれ、郵便局や書店等にて無料で配布している申告用紙と説明書を用いて必要事項を記入しポストに投函する方法と、パソコンを用いてオンラインで行う方法(電子申告)とが存在し、現在、個人の確定申告の7割が電子申告によって行われている。 オーストラリアには2種類の電子申告が存在する。税務代理人経由で、税務代理人の事務所を通して国税庁と専用回線で結ばれている方式と、申告者自らが行うインターネット申告(「e-Tax」)である。税務代理人経由の電子申告は1990年より導入され、個人所得税や法人所得税等を対象としている。一方、インターネット申告である「e-Tax」は、1997年に試行が開始され1999年より個人所得税を対象に導入されている。 「e-Tax」の基本的な仕組みは、申告者がオーストラリア国税庁のホームページ[英語サイト]から申告書作成ソフト及びセキュリティソフトをダウンロードし、当該ソフトに従って申告書を作成の上、インターネット回線を通じて送信するというものである。タックス・パックによる申告の場合、課税通知書が郵送されてくるまでに6週間を要するのに対し、「e-Tax」による申告の場合には、それが2週間以内に短縮されるなど、その利便性からインターネットへのアクセスが可能な市民の間では、「e-Tax」の利用率が向上しているという。(※注1) 本レポートでは、オーストラリアの電子納税申告のうち、申告者自らが行う「e-Tax」について、実際の体験談を報告する。 ※注1:2004年度は約108万人が利用(オーストラリア国税庁HPより)。 オーストラリアのインターネット申告体験【事前にタックス・ファイル・ナンバーを申請】「e-Tax」の利用に当たっては、事前申請として、予めタックス・ファイル・ナンバーを取得しておく必要がある。タックス・ファイル・ナンバー(Tax File Number)とは、オーストラリア連邦政府が納税者に交付する納税者番号であり、所得税申告の際に必須の番号である。申告者は、身分証明書を提示の上、税務署にて取得することとなっている。 【まずは専用ソフトをダウンロード】「e-Tax」による申告作業は、オーストラリア国税庁のホームページから、専用のソフトウェアである「2005(※注2) Tax Return Program」をダウンロードし、各自好きなプログラム名を設定し、申告者自身のパソコンにインストールすることから開始する。ある程度コンピュータを使い慣れた人であれば、ダウンロードからインストールまでの一連の作業が画面上で指示されるため、その指示に従うことによって簡単に行うことができる。 図1 「e-Tax」のトップページ
(出典:オーストラリア国税庁) 同ソフトのインストール完了後、次は納税申告のために必要な個人情報や所得の詳細を入力していくことになる。この入力作業は、オンライン接続中でなくても実行することができ、また入力作業を一時中断したい場合には、プログラムが自動的に情報をセーブするため再記入の必要がない。つまり、いつでも好きな時に作業を再開することができる点が大変便利である。 また、プログラムを再開する際には、個人のタックス・ファイル・ナンバーと、申告者がプログラムのインストール時に入力したプログラム名を入力する必要がある。つまり、本システムにおける本人確認は、タックス・ファイル・ナンバーとプログラム名の入力によって行われることとなっており、これらの番号がIDやパスワードに相当する。この本人確認が逐一行われることで、セキュリティの面からも安心である。 ※注2:2005年度の場合。 【基本的な個人情報を入力】ソフトのインストール等の準備が整えば、いよいよ申告に関わる情報の入力である。最初のセクションでは、住所、氏名、生年月日、タックス・ファイル・ナンバー等の基本的な個人情報(Personal Details)を入力する。 基本的にプログラムは問答形式となっており、画面上に一問ずつ表示された質問に対し、一つずつ回答することによって次の質問画面に進むことができる。 また、簡単且つスピーディに一連の作業が進むよう、画面上に様々な工夫や機能が施されている。例えば、質問で使われている用語の意味が分からない場合、その用語をクリックすると、その語彙を説明する画面が表示される。或いは質問の意図が分からない場合には、同画面上のヘルプボタンをクリックすると、更に詳しく説明する画面が表示される仕組みとなっている。同ヘルプ画面には、説明だけでなく回答例も提示されているため、それらを参考にしながら回答ができ大変便利である。 図2 基本的な個人情報の入力
(出典:オーストラリア国税庁) ここでは基本的な個人情報だけでなく、余分に納めた税金の返金方法についても聞かれる。返金方法には2種類あり、税務局から郵送で届く返済の通知を銀行に持参し、窓口で直接返金してもらう方法と、Electronic Funds Transfer(EFT)を利用する方法である。EFTとは、この基本情報入力の最終画面において個人の銀行等の口座の詳細を入力することにより、数週間後指定した口座に自動的に入金が行われるという方法である。利便性の観点から、最近では多くの市民がEFTを利用している。 ここでの情報の入力や質問への回答は、後々の質問と関連してくるため、確実に回答するよう注意する必要がある。ただし、万が一誤った回答をしてしまっても、いつでも前の質問画面に戻れるため、修正等のやり直しが何度でも可能となっている。 【納税額算出に関わる一年間の所得を入力】次に、申告者が当該課税年度の一年間に得た、全ての所得の詳細を入力する。 一般的に、納税申告の時期になると、雇用者は雇用主より総所得額及び納税額が記載された所得明細書(Payment Summary)が配布されるため、それを参考にしながら入力していくこととなる。複数の雇用主からの所得がある場合、同様に全ての詳細を画面に入力する。この入力の際に、雇用主のビジネス番号も入力することとなっている。雇用主のビジネス番号(Australian Business Number)とは、オーストラリアにおける2000 年の税制改革に伴い、全ての事業主体(政府省庁、個人事業者、社団法人、慈善事業団体、不動産オーナー等も含む)に取得が義務づけられた識別番号で、会社法上の会社の場合は、それまで使われていた9桁の法人登録番号(Australian Company Number)の前に2桁の数字を付加した11桁の数字が国税庁より交付されることとなっている。税制上は、このビジネス番号を取得しなければ、事業活動による収入の48.5%がその都度源泉徴収されたり、仕入れなど事業のために支払った消費税の控除が受けられなかったりといった不都合や不利益を被る。ビジネス番号は、国税庁と事業者との間の手続きを簡素化することに利用されているほか、その他の政府組織との取引や事業者同士の取引にも利用されており、申告者が「e-Tax」を利用する際にこの番号も入力することで、国税庁側は申告額の正誤の確認が行えるようになっている。 また、申告者によっては、就労により得た所得だけでなく、退役軍人援護局等から支給される年金等、政府機関から各種手当を受けている場合もある。この場合には、その手当金も所得の一つとして詳細を提示しなければならない。その他、所得として考えられるのは、オーストラリア国内の金融機関等から配当された金利取得、国内の企業や信託会社等から得た配当金、生命保険会社からの特別配当金、或いは個人の保持する不動産の家賃として得た収入等が挙げられる。それらの収入があった者は、その全ての内訳を記入することとなっている。 図3 所得の入力
(出典:オーストラリア国税庁) 所得に関する全ての質問に回答し、所得額の入力が終了すると、当該セクションの最後の画面に、総所得額及び納税額の決算が表示され、所得の種類等の内容を含めて一目で確認することができる。 【控除を得るために諸経費を入力】全ての所得額の入力が終了すると、次は控除の請求を行うための質問が始まる。ここでは、勤労に携わるために必要とされた諸経費の種類と金額を入力する。 請求可能な経費の例としては、職務のために個人所有の自家用車を使用した際の出費、職務に必要な制服や特別なユニフォーム、クリーニング代、組合費、残業中の食費、セミナー等の参加費、仕事に必要な書籍・コンピュータやソフトウェア等の代金、或いは自宅での勤労に使った電話等、かなり幅広い種類の経費を請求することができる。 図4 諸経費の入力
(出典:オーストラリア国税庁) ただし、無制限に控除請求ができるわけではない。諸経費の総額が300オーストラリアドル(約25,500円)を上回る場合には、国税庁からレシートや請求書等の提示を要求する通知が届き、申請した経費について証明する必要が生じる。 しかしながら、請求額が一定額を超えない間は、国税庁からのレシート等の提示要求や検査が行われないため、事実上は虚偽の出費を記載することが可能な仕組みとなっている。このことに関して、利用者の立場からは不都合を感じる点は無いが、政府のシステムにこのような抜け穴があることに対しては疑問の念を覚えざるを得ない。 【課税差引を確認】諸経費の入力が完了すると、次のセクションでは、自分が課税差引(Tax Offset)の対象となるか否かを確認する作業を行う。課税差引(免税)対象となるのは、申告者自身がオーストラリア国内で就労しており扶養家族がいる場合、海外所在の政府防衛機関や国連に勤務している場合、当該年度に1,500ドル以上の高額医療費を支払った場合、或いは55歳以上の高齢就労者の場合等である。 同セクションでは、画面上に一問ずつ質問が提示され、その質問に答えることによって自分が差引(免税)対象者に該当するか否かを確認することができるため、高齢者であっても容易に判断可能なシステムとなっている。 図5 課税差引の確認
(出典:オーストラリア国税庁) 【入力事項の最終確認を行い申請】所得総額、控除額、及び差引額に関する全ての質問に回答し、必要事項や金額の入力が完了すると、自動的に想定される納税額が算出され表示される。もし、源泉徴収により既に納めた税額がこの金額を上回っている場合には、後日その超過額が返金され、足りなければ再度徴収されることとなっている。 最後には、検証のセクションに移り、これまで行った回答に関する誤りや記入漏れのチェックが自動的に行われる。これによって、申告者自身がいちいち神経質にチェックすることなく、申告する前に今一度ミスが無いかを容易に確認することができる。 全ての入力作業が終了し、上記の検証も完了した後、インターネットに接続されていることを確認の上、申告を行う。この最後の情報送信時には、再度タックス・ファイル・ナンバー等の個人情報を入力することが求められ、ここでもセキュリティが徹底されているとの印象を受ける。 また、これら申告に関わる一連のパソコン上での作業は、逐一紙出力が可能となっている。申告者はいつでも前の入力画面に戻ることができるため、もしもの場合に備えて紙にも出力しておくと安心である。 ソフトのダウンロードまでは多少面倒と感じるものの、入力が始まってしまえば誤記の訂正も容易であり、納税額の合計も自動的に算出され、最終的な納税額の確認作業も自動的に行われるなど、これまでの手で記入作業を行っていたことを考えると、随分楽になったと感じる。また、パソコン一つで自宅にいながらにして申告作業が完了するため、郵便投函の作業や、返金のために税務署に行き窓口で待たされることも無い。 しかしながら、本システムがWindows保持者でなければ利用できない(Macintoshプラットフォームでは利用できない)点や、ある一定金額を超えなければ虚偽の控除の請求が事実上は可能となっている点など、一部不便な点や不安な面もある。利用者側としては大変便利なシステムであると感じているため、今後このような点が改善され、「e-Tax」がますます使い勝手の良いシステムとなるよう期待したい。
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