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概要  
近年、中国では電子商取引(EC)が盛んに行われており、市場が拡大傾向にある。その影には、政府の積極的な推進・取り組みが見られる。政府内で電子商取引推進を行う組織「情報産業部 情報化推進司」の設置や電子署名法等の法制化、また「中国国際電子商取引ネットワーク」に代表されるインフラの整備等、様々な取り組みが国家規模で進められている。今回は、これら政府の取り組みや中国EC市場の現状についてレポートする。   
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アジアマンスリーニュース 2004年12月号

「中国の電子商取引(EC):発展する市場とIT政策」

拡大を始めた中国の電子商取引市場

1982年に米国ARPANETがTCP/IPの使用を決定してから5年後、中国初の電子メールが「インターネット」を通じて世界へと送信されたのを皮切りに、中国の電子通信産業は急速に発展してきた。1994年には初のインターネット関連規定が発表され、中国はグローバルなインターネット網へ本格的に参入した。構築された企業間電子商取引(BtoB)ネットワークは、その市場とともに拡大を続け、現在もなお猛スピードで発展している。

中国の電子商取引市場の発展過程は、現在までで大きく三つの段階に分けることができる。

  • 第一段階(1990-1993年)−インターネット接続以前:
    EDIシステムによる電子商取引が第8次5ヵ年計画で重要プロジェクトに組み入れられ、主に国内外貿易、交通、銀行などの分野で展開された。
  • 第二段階(1993-1997年)−インターネット接続・電子政府構想完成:
    中国における電子政府の構想が完成し、いわゆる"三金"プロジェクト[2004年9月号を参照]が相次いで立ち上げられるなど、電子商取引市場発展の土台が構築された。インターネット企業(インターネットサービスプロバイダやドットコム企業)の設立、"金橋"ネットワークとWWWが正式に開通したことなどを受けて、ネット広告の使用や中国商品卸システム(CGOS)の運用が開始されるなど、中国でもインターネットの商用化が進み始めた。
  • 第三段階(1998年以降)−中国電子商取引の本格開始と爆発的な発展:
    1998年3月に初の電子商取引が成功して以来、翌年1999年には取引総額が2億元(30億円)(注1)、2000年には771億元(1兆1,565億円)を超え、現在まで目覚しく成長している。各都市や企業が相次いで電子商取引システムの開発や関連サービス、プラットフォームの建設などを始めた。また同時に政府にも情報産業部が設置され、規格や法規の整備など、今後の発展を見据えた政策が打ち出された。

中国の電子商取引市場は、全体的に飛躍的な進歩をとげている。しかしBtoB市場が見せる大きな躍進に比べると、BtoC市場の伸びは比較的ゆるやかである。その原因として、クレジットカード普及の遅れ、インターネットセキュリティ対策の欠如が引き起こすネットワーク犯罪への不安、商品の品質ないしアフターサービスに対する不安、商品の配送に時間がかかり過ぎること、インターネット利用者の若年齢比率が高く購買能力に欠けることなどが考えられる。このようなBtoC市場の問題点にはBtoB市場が抱える問題と共通するものもあり、中国政府は電子商取引全体に関連する法体制、インフラ整備を重視し、中国電子商取引誕生から現在まで継続的な改善に取り組んでいる。

(注1)1元=15円として換算。

電子商取引に関する政策−中国政府が推進をバックアップ

中国政府の電子商取引の所管体制

1998年の全国人民代表会議で情報産業部[中国語サイト]の発足が決定された。情報産業部は元の中国郵政部や電子工業部などの機関から再編新設された国家機関であり、主に電子商取引を含む中国情報産業の発展戦略、発展措置、技術体制基準および関連法律・法規を含めた総体的枠組みなどの検討・制定、ソフトウエア産業の法律・法規等の原案の策定、インターネットの接続管理、衛星軌道の位置決定などの業務を行っている。

中国の電子商取引の主管官庁(図1)は情報産業部の情報化推進司になるが、電子政府を主管している国家情報化上層タスクフォースや経済・貿易を主管する商務部との連携も強く、各々電子商取引に関わる政策を策定する役割を担っている。

図1:中国の電子商取引における管轄省庁

中国の電子商取引における管轄省庁

出典:情報産業部ウェブサイト等より作成

法整備の取り組み

中国政府は電子商取引に対する法規は、1999年から順次整備されてきた。まず1999年10月に外資系企業のコンピュータ用暗号製品などの販売、利用を管理する「商用暗号管理条例」[中国語サイト]を公布、施行した。外資系企業は暗号製品、技術を含む設備を輸入する際、必ず事前に国家暗号管理機構の批准を受けなければならない。また国内販売時には同機構への申請を行い、同機構が指定する製品品質検査測定機構による検査測定に合格しなければならないとした。2000年10月には「中華人民共和国電信条例」[中国語サイト]「インターネット情報サービス管理規則」[中国語サイト]が公布され、私営企業がインターネットの情報サービスなどの電信付加価値業務を行うことが初めて許可された。同年12月、「インターネットセキュリティ保護の決定」[中国語サイト]が公布された。2004年8月、「電子署名法」[中国語サイト]を公布し(施行は2005年4月予定)、電子署名に手書きの署名や印鑑と同レベルの法的効力を持たせることを決定した。

インフラ整備の取り組み

1993年、中国政府は"金関"プロジェクトを発表し、電子商取引分野の国際提携も積極的にサポートする姿勢を見せた。1997年には中国対外経済合作部が全額出資した中国国際電子商取引センタ(CIECC)が設立され、金関プロジェクトの要となるネットワーク"中国国際電子商取引ネットワーク"を構築、管理・運営している。

中国国際電子商取引ネットワーク(図2)は、通信プラットフォーム、データ交換プラットフォーム、情報プラットフォームから成るネットワークプラットフォーム、基幹ネットワークへのアクセスポイント、国際接続ポート、バックアップセンタ等いくつかの主要なシステム構成要素により、ネットワークの全体が形成されている。中国電信(チャイナ・テレコム)提供の光ファイバー・ケーブル、フレームリレー網、一般の加入者電話回線網などの通信手段を通じ、放射線状のネットワーク構造を形成しており、現在基幹アクセスポイントは全国97の大中都市に分布している。

中国国際電子商取引ネットワークに接続しているユーザは、国家計画委員会、経済貿易委員会、国有資産監督管理委員会、税関総署、外国為替管理局、国家税務総局、銀行および各級対外経済貿易主管部門、中国の在外経済総取引機関といった政府機関の他、各輸出入関連企業合同団体(中国紡績品輸出入商会、中国医薬保健輸出入商会など)、各種企業も含まれる。また、外部接続しているネットワークは、中国における10大インターネットサービスプロバイダ(CSTNET、CHINANET、CERNET、UNINET、CNCNET、CHINA169網、CIETNET、CMNET、CGWNET、CSNET)、国外電子商取引ネットワーク(GE、Lucentなど)、香港貿易通専用ネットワーク、国連貿易ネットワーク発展センタなどである。

図2:中国国際電子商取引ネットワーク

中国国際電子商取引ネットワーク

出典:中華人民共和国対外経済合作部(現商務部)ウェブサイト

電子商取引安全認証センタは、中国金融認証センタ(CFCA)[中国語サイト]、中国電信安全認証システム(CTCA)、中国国際電子商取引センタの開発による商業電子情報安全認証システム、27の地方CA認証センタ、その他民間の電子商取引認証センタより構成されており、国家電子商取引認証機関管理センタ(中国電子商取引協会[中国語サイト]の実務機関)がこれらをとりまとめ、管理している。

この中でも、中国金融認証センタ(CFCA)は、2000年、電子商取引の安全な支払業務を全面的にサポートする中国国内唯一の第三者オンライン専門認証サービス機関として中国人民銀行主導で設立され、オンライン取引を行う双方がCFCAを通じてデジタル証書を発行する方式での電子取引を推進した。

翌2001年、WTO加盟で中国は国内各業界の段階的な市場開放を約束した。世界中の企業が次々と中国に進出し、諸外国との取引増加が中国電子商取引市場の発展速度を速めた。2002年には、国家情報化指導グループの批准を受け「国民経済と社会発展第10次5ヵ年計画情報化重点専門プロジェクト計画」が発表され、その中で政府は電子認証体系、先進的決済システムと信用制度の構築を加速させ、電子商取引の発展を力強くサポートすることを改めて強調した。また、前述の電子署名法(2004年8月公布、2005年4月施行予定)では、電子署名に法的効力をもたせることにより電子商取引の更なる活性化を目指している。

電子商取引市場の現状

市場規模〜BtoB、BtoC、CtoC

電子商取引市場全体の規模をGDPに占める割合で見ると、BtoB、BtoCの合計でもわずか1.0%程度である(日本は7.1%、アメリカは9.0%)。しかし、取引総額は、2001年1,088億元(1兆6,320億円)、2002年1,809億元(2兆7,135億円)、2003年2,756億元(4兆1,340億円)と増加し続けている(CCID 調査)(注2)。

電子商取引市場の主役とも言えるBtoB市場の2003年取引総額は2,704億元(4兆560億円)、BtoC市場の52億元(780億円)を大きく上回っている(CCID 調査)。しかし、BtoC市場も順調に成長しており、2004年6月時点のインターネット利用者は約8700万人となり、オンラインショッピング利用者は、アンケート調査対象者全体の37.8%に上った(CNNIC 調査)(注3)。インターネットに関する法規制や市場の整備進展、各オンラインショップ側によるサービスの充実などの効果が出ているものと思われる。(下の表1を参照。CNNIC調査より)。

CtoC市場では、最大手サイトの易趣(eBay)の2003年取引総額は10億元(150億円)で、現在は月平均取引額1億元(15億円)を保持している。無料オークションサイト淘宝網の2004年8月の取引総額は1億2000万元(18億円)であった。

(注2)CCID:中国電子情報産業発展研究院(中:中国電子信息産業発展研究院)。中国情報産業部直属の調査研究機関。上記数字は、CCID発表の「中国IT市場研究年度報告」による。

(注3)CNNIC:中国ネットワークインフォメーションセンタ(中:中国互聯網絡信息中心)。CNNIC調査とは、CNNICが毎年2回実施する「中国ネットワーク発展状況統計報告」(中:「中国互聯網絡発展状況統計報告」)。

市場の現状〜トップ企業がシェアをほぼ独占

2002年12月時点の中国電子商取引サイト数は前年比12%増の3,804サイトである。市場全体の特徴として、BtoB、BtoC、CtoCそれぞれの市場のシェアが1社(1サイト)独占または数社の寡占状態にあることが挙げられる。

BtoB市場はアリババ[中国語サイト]の独走態勢となっており、現在も順調に成長を続けている。BtoC市場は、七彩谷[中国語サイト]卓越網[中国語サイト]当当網[中国語サイト]6688網[中国語サイト]のトップ争いで、いずれも決済や配送面の配慮、アフターサービスを充実させ、利用者の抱える不安や問題点を積極的に解決する姿勢を見せている。CtoC市場は、2003年7月まで90%のシェアを占めていた有料オークションサイト易趣[中国語サイト]の独占状態を崩すべく、前述のアリババが2003年5月無料オークションサイト淘宝網[中国語サイト]を登場させ、現在取引額で易趣より優勢に立っている。また、2004年初めに新浪とYahoo!の提携により構築された一拍網[中国語サイト]の今後の成長にも業界の注目が集まっている。

主な取引方法〜BtoCではカード決済が主流に

CNNICの調査開始以来、オンラインショッピングの最も一般的な取引方法として浸透していた代金引換であったが、2003年にはカード決済が代金引換をしのぎ、その後も順調に利用者率を伸ばしている(表1)。カード発行枚数の増加からも、近年カードが中国社会に普及してきている状況がうかがえる(表2)。

表1:電子商取引利用者数と支払方式の推移

電子商取引利用者数と支払方式の推移

出典:CNNIC中国インターネット発展報告データより作成

2003年にオンラインショッピング利用者数が多いのは、SARSの影響で外出する人が減り自宅にいながら買い物をする人が増えたためと考えられる。

表2:クレジットカード・デビットカード発行枚数の推移

クレジットカード・デビットカード発行枚数の推移

出典:中国金融年鑑2003

物流インフラ整備情況

物流インフラ問題に関しては、都市部では自転車便の利用など配送方法が工夫され、即日配送も実現している。しかし、その他の地域ではいまだ物流面が整備されておらず、配送時間の短縮が課題となっている。

取引されている主な商品(BtoC、CtoC市場)

オンラインショッピングで最も多く取引されているのは、書籍(57.6%)である。次いでコンピュータ関連製品(33.4%)、音楽機材と製品(26.4%)、生活・家庭用品とサービス(16.7%)の順となっている(CNNIC調査2004年6月時点)。利用者は、店舗より低価格の商品が多いこと、買い物の便利さ、豊富な品揃えなどオンラインショッピング利用の理由としている。

展望−今後注目される課題の克服

中国全土で8700万人という現在のインターネット利用者、さらに潜在的な利用者数を考慮すると、今後BtoC、CtoC市場の規模は間違いなく拡大していくと思われるが、市場規模で比較すると、BtoB市場に追いつくほどの成長は現時点ではまだ期待できない。しかし、BtoC市場では、1分(1元の100分の1の通貨単位、約0.15円)でオンライン決済を試すことのできるサイト(6688網)が登場するなど、企業側の「信用」問題に対する努力も見られる。カード普及の推移から、今後もカード所有者の人口は増加すると考えられ、同時にオンラインショッピングのカード利用率も上昇していくことになるだろう。BtoB市場においては、特に中小企業にとって低コストで高い効果の電子商取引が今後のビジネスの鍵となってくる。

物流インフラは、近年の中国経済全体の発展を妨げる要因となりうる最大のネックとされ、現在特に沿海部地域で急速に整備が進んでいるものの、内陸部や中西部では未だかなり遅れている。ただし、WTO加盟にともなう市場開放を受け外資系企業の中国物流分野参入も目覚しく、企業毎で全国に配送センタを配置し運送会社を持つなど、独自の流通チャネルを構築している動きも見られ、このような企業の成長により、全国的に配送時間の問題が解決されることが期待できる。

以上のような市場の参加者が持つダイナミズムが市場の旺盛な成長を下支えしていくのは確実である。しかし、電子商取引の利用者側の不安解消等、解決すべき課題について、法体制の整備等を含め、引き続き中国政府が果たす役割は大きいだろう。それは、他の先進諸外国も同時並行的に取り組んでいる課題なのである。


【2004年12月 株式会社NTTデータ 国際事業推進本部/株式会社NTTデータ経営研究所】

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